2018年4月15日日曜日

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その1)

先代の「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED」をD700の頃から使っている。AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDは、ニッコールのラインナップ上ではプロクラスの標準ズームという位置付けだが、何にでも使える万能ズームというわけではない。いわゆる「でっこまひっこま」的な不思議な性質を持つレンズだ。コントラストが高く力強い描写をし、ポートレートやスナップでは、暗部が引き締まった吸い込まれるような背景ボケに、ピント面の被写体が浮き出しているような立体感を紡ぎだす。
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDにて (c)俺2010

このレンズは近~中距離の被写体を絞り開放付近で撮影する場合に非常に美しい写りをするが、一方でズームのワイド側は像面湾曲が顕著で、画面中央部から周辺へ向かうにつれピント面が急激に前ピンになる。このせいで、平面的に配置されている被写体に正対して向かう場合や無限遠を相手にする場合には、画面周辺は露骨にピンボケになってしまう。このレンズのワイド側を使う場合、画面全体にピントを合わせることはあきらめ、絞りの解放付近を使ったボケを生かした作図をするか、さもなくば、足元や左右に近景を配した一点透視図法のような構図を工夫することになる。しかしながら、このレンズのフィールドカーブは現実にとり得ることができる構図とはかけ離れており、多くの場合には不都合にしか作用せず、風景などでは周辺の前ピンを被写界深度で誤魔化すために、うんと絞り込んで使うしかない。ところが、一般的なレンズでは解放から3段も絞れば周辺まで画質が安定するのが普通なのに対し、このレンズの場合、画面中央部にピントを合わせると1200万画素のD700でさえ、F8にまで絞り込んでも画面周辺部を被写界深度内に入れることが難しかった。(参考:2010年の記事
当時の1200万画素のボディでは、F8まで絞り込んだ上にフォーカスを僅かに後ピン方向へコントロールするか、回折の影響をなんとか許容できるF11まで絞り込むことで、画面中央部と周辺部の画質差があまり目立たないようにすることはできたが、このレンズは2007年当時の1200万画素のボディを想定し、ギリギリの収差バランスで設計されたのだろう。
高画素化された以降のボディでも、このレンズは被写体がピント面にある限りは解像力やコントラストは抜群なので、構図次第では充分使うことができる。だが、高画素機では遠景や平面を相手にする機会も一段と多くなり、このレンズの極端な性格はそういった被写体にはまったく適していないことがはっきりと表れるようになった。もちろん、単焦点レンズであってもこのあたりの焦点域では、フルサイズ画面の端から端までキッチリ解像するレンズを見つけるのは難しいし、ズームレンズにそれを求めるのは常識ではない。日常のすべての被写体が平面や無限遠であるというわけではないし、そんな構図ばかりが良い写真であるはずもない。だが、個人的には高画素機のD800EやD850を手に入れてからは、レンズが結ぶ細密な像を画面全体の隅々にまで充満させるという遊びにのめり込んでしまい、近頃にあっては単焦点レンズや望遠系のレンズなどを使うことが多く、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDの出番はほとんど無くなっていた。
左:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(2007-2015)
右:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(2015-)

長くなったので、続きは次回AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(その2)にて。

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